画像をアップロードせずに高画質化する方法
画像をブラウザの中だけで拡大・修復できます。ファイルはどこにも送信されません。
画像を高画質化するツールの多くは、まずファイルを預けることを求めます。クライアントから受け取った素材や、未公開のイラスト、本人の同意なく他社のサーバーに置きたくない人物写真では、これが問題になります。別のやり方があります — モデルを自分のブラウザで動かす。ファイルは端末から出ません。
「無料オンラインツール」がたいていアップロードを求める理由
高画質化はニューラルネットワークを画素に通す処理です。その計算はどこかで行う必要があり、最も素直な置き場所は借りたサーバーです。ファイルが上がり、結果が下りてくる。計算コストはサービス側が負担します。
この構造は気づきにくいところがあります。見た目には何も変わったところがないからです。ドロップ領域があり、進捗バーが出て、ダウンロードリンクが現れる。しかしその間、自分の画像のコピーが、自分の管理下にないハードウェアの上に、読んでいない保存ポリシーのもとで存在していました。
たいていのスナップ写真なら問題になりません。未公開の作品、クライアントの素材、締結した契約が及ぶ画像では、これがそのまま問題になります。
方式によって、ファイルがどこに行くか
高画質化ツールには 3 つの形があります。違いとして効いてくるのは使っているモデルではなく、ファイルがどこに置かれるかです。
| 方式 | 計算する場所 | 端末から出るもの |
|---|---|---|
| サーバー型の web ツール | 借りたサーバー | 画像そのもの |
| デスクトップアプリ | 自分の端末 | なし |
| ブラウザ内処理 | 自分の端末 | なし |
1 行目の代表が waifu2x です。処理はサーバー側で行われるため画像のアップロードが必要で、送れるファイルサイズにも上限があります。無料で、モデルはイラストに特化しており、長いあいだ定番として挙げられてきました。
2 行目の代表が Upscayl です。モデルを自分のハードウェアで動かし、何も送信しません。設計としてはまさに正しい形で、代償はインストールが必要なこと、更新を追う必要があること、そしてそもそもソフトウェアをインストールできる端末である必要があることだけです。
ブラウザ内処理が 3 行目にあるのは、デスクトップアプリと同じ理由によります。違いはインストールの手順が無いことだけで、差はそこに尽きます。プライバシー上の差であるかのように書くべきではありません。
代わりの選択肢 — ローカルで動かす
ブラウザは WebGPU を通じて、ニューラルネットワークを GPU 上で直接実行できるようになりました。モデルのファイルを一度だけ取得すれば、以降の計算は自分のハードウェアで行われます。デスクトップアプリと同じ仕組みで、違うのはインストールが要らないことだけです。
これは従来の二者択一を逆転させます。利便性と管理権のどちらを取るかではなく、楽な経路がそのまま安全な経路になる。ファイルが動く理由がそもそも無いからです。
実際には何を引き換えにしているか
ローカル実行には代償もあります。はっきり書いておきます。
モデルを一度だけダウンロードします。 約 11.6MB で、以降はキャッシュされます。 2 枚目からは待ち時間なく始まります。
計算するのは自分の端末です。 速度はデータセンターではなく手元の GPU で決まります。 Apple Silicon のノート PC では、1024 画素四方の画像を x4 にする処理が、写真向けモデルで約 7.1 秒、イラスト向けモデルで約 3.9 秒で終わります。入力サイズには上限があり、12.6MP を超える画像は、途中のバッファをブラウザが確実に保持できないため受け付けません。
WebGPU 対応ブラウザが必要です。 最近の Chrome と Edge が該当します。対応していない場合は、劣った処理に黙って切り替えるのではなく、その旨を表示します。
これが実際に効く人
自分で撮った猫の写真を拡大するだけなら、ここまでの話で何かが変わるわけではありません。具体的に何かが変わるのは、「プライバシーが気になる人すべて」よりも狭い範囲です。
- 未公開の作品を扱うイラストレーター。 まだ公開していない絵は、他社のサーバーに気軽に置けない唯一のファイルです。流出のリスクと公開日が、そのまま同じ意味を持つからです。
- クライアントの素材を扱う人。 素材の保管や送信について何かを取り交わしているなら、アップロードの手順が入った時点で、サービス側のポリシーを読み合わせる作業が発生します。
- 他人が写っている写真。 被写体はあなたに撮られることに同意したのであって、第三者に処理されることに同意したわけではありません。
- 管理された端末で作業している人。 ソフトウェアをインストールできない環境では、デスクトップアプリのほうが優れた道具であっても、その選択肢が存在しません。
手順
- Pixmend を開き、画像をページにドロップします。
- x2 か x4 を選び、写真向けとイラスト向けのモデルを切り替えます。
- 比較スライダーで処理前後を見比べ、結果をダウンロードします。
アカウントの手順はありません。アカウントという仕組みが無いからです。送信の手順もありません。送信先が無いからです。
自分で確かめてください
ここは信用で済ませるべきではない部分です。ブラウザの開発者ツールを開き、Network タブを表示したまま画像を処理してください。初回にモデルのファイルを取得する通信は見えますが、その後、画像を運ぶ通信は現れません。この主張はその場で反証を試せます。検証できる形でしか、プライバシーの主張には意味がありません。
別の手段のほうが向いている場合
ブラウザが適さない場面もあります。負けない比較は比較ではないので、正直に書きます。
x4 より大きい倍率が必要なとき。 ブラウザ内処理で選べるのは x2 と x4 です。 8x がどうしても必要なら Upscayl Cloud が対応しています。月 $24.99 の有料サービスで、無料枠は 10 クレジット。ファイルは先方のサーバーに渡ります。倍率と引き換えに受け入れる取引です。
ブラウザが WebGPU に対応していないとき。 計算にはページからの GPU アクセスが要ります。対応していない場合はデスクトップアプリのほうが適切で、Upscayl は無料で使えます。
画像がとても大きいとき。 12.6MP という上限があり、これを超えると途中のバッファをブラウザが確実に保持できません。それ以上のサイズは、デスクトップ環境でローカル処理するのが現実的です。
何をして、何を意図的にしないか
Pixmend は Real-ESRGAN 系のモデルを使い、圧縮と拡大で失われたディテールを復元します。一方で、元々フレームに無かったディテールは作りません。生成系の高画質化は、もっともらしい質感を想像することで見た目に鮮明な結果を出せますが、その過程で顔が少し別の人物として戻ってくることがあります。
実在の人物を写した写真や、設定を崩せないイラストにとって、これは好みの問題ではありません。修復された画像と、新しく作られた画像の違いです。無料で使えます。商用利用も可能です。