同人誌の入稿解像度に足りないとき(350dpi の計算)
入稿仕様の「350dpi」はミリ指定なので、まず必要な画素数に直します。どれだけ足りないかが分かって初めて、拡大で届くかどうかが決まります。
手順
- 仕上がりサイズを画素数に直す
各辺のミリ数を 25.4 で割り、350 を掛けます。それが印刷所の求めている画素数です。 - 手元のファイルと比べる
必要な幅を今の幅で割ります。この比だけが判断材料で、ファイルの dpi 欄は関係ありません。 - 足りる範囲でいちばん小さい倍率にする
Pixmend を開き、2 つ分までの不足なら x2、それ以上なら x4 を選びます。 - 書き出す前に等倍で線を見る
いちばん細い線と平坦な塗りを 100% で確認し、PNG で書き出して再圧縮を避けます。
「350dpi で」という指定は、仕上がりサイズが決まった時点で必要な画素数が決まるという意味です。拡大で届くかどうかを考える前に、その画素数を出してください。少し足りないのか、どんなツールでも正直には埋められない量なのかは、そこで決まります。狙う数字が出たら Pixmend を開くだけです。
計算はこれだけ
ミリ数を 25.4 で割って 350 を掛けます。よく使う判型を切り上げると次のとおりです。
| 仕上がり | 350dpi | 塗り足し 3mm 込み |
|---|---|---|
| A4(210 × 297 mm) | 2894 × 4093 px | 2977 × 4176 px |
| B5(182 × 257 mm) | 2508 × 3542 px | 2591 × 3624 px |
| A5(148 × 210 mm) | 2040 × 2894 px | 2122 × 2977 px |
| B6(128 × 182 mm) | 1764 × 2508 px | 1847 × 2591 px |
絵が断ち切りまで届くなら、右の列を見てください。塗り足しは入稿するファイルの一部なので、必要な解像度の一部です。仕上がりサイズちょうどに見えるファイルが弾かれるのは、たいていここです。
仕様が違うなら自分の数字を入れてください。モノクロ 2 値の線画は 600dpi を求められることがあり、本文だけ 350dpi 未満を許す印刷所もあります。正解は印刷所の仕様書で、計算のしかたが変わるわけではありません。
dpi は札で、実体は画素数
ファイルに入っている dpi の値はメタデータです。書き出しダイアログの 72 を 350 に書き換えても画素は増えませんし、再サンプリングせずに高い dpi で書き出しても変わるのは数字だけです。入稿チェッカーが弾いてくるとき、見られているのは画素数です。
これは裏返しても成り立ちます。画素数が足りているファイルは、dpi 欄が何であっても解像度としては足りています。 上の表を満たしているなら、dpi の表示は数秒で直せます。
どれだけ拡大が要るのか
必要な幅を、今の幅で割ってください。判断はこの比だけです。
- 2 つ分までの不足 — x2 で届きます。A5 は横 2040 px なので、 1200 px の絵なら余裕を持って超えます。
- 2 つ分を超えて 4 つ分まで — x4 です。700 px のラフでも A5 なら 2800 px になり、必要な 2040 px を上回ります。
- 4 つ分より足りない — 拡大では解決しません。目標サイズで描き直すか、判型を小さくします。それでも埋まると言うツールは、足りない分を創っています。
選ぶのは、使える中で最大の倍率ではなく、要求を満たす中で最小の倍率です。線画では、拡大の余分な一段が、そのまま線の性格が変わる機会になります。大きめに出してから編集ソフトで縮めるのは構いませんが、必要も無いのに大きくするのは損です。
なお、x2 と x4 で処理時間は変わりません。x2 は同じ x4 のモデルを走らせて出力を縮めたものだからです。x2 を選ぶのは仕上がりのための判断であって、待ち時間のためではありません。
始める前に知っておく上限
入力できる画像は 12.6MP までです。B5 の 1 ページを 350dpi で持った状態はその内側なので、ページ 1 枚のスキャンはたいてい収まります。見開きの大きなスキャンは超えることがあります。この上限がかかるのは入力で、出力の側ではありません。
初回はモデルとランタイムで 11.6MB ほど取得し、その後は端末内に保存されます。それ以外にブラウザから出ていくものはありません。処理はあなたの GPU で行われ、 DevTools の Network タブが処理中も静かなままであることで確認できます。未発表の原稿を扱うときは、たいていここが上の計算より重要です。
入稿する前に見るところ
画面に合わせるのではなく 100% で見て、いちばん細い線、線の入り抜き、平坦な塗りを確認してください。そのうえで PNG で書き出し、出口で再圧縮されないようにします。画面では見えない JPEG の傷は、インクになると見えます。
元がチャットアプリを経由した JPEG なら、拡大と同時に中くらいのノイズ除去をかけてください。圧縮の傷も一緒に大きくなるからです。ペイントソフトから PNG で出しただけの絵なら、消すべきノイズは無いので、その設定は触らないでおきます。
そして正直な限界です。これはファイルにあるものを直すだけで、無いものを描き足しません。小さく強く圧縮されたサムネイルは、その時点で線が壊れています。大きくしても、壊れた線が大きくなるだけです。画面で見るには十分でも、刷るには足りません。